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更新日:2023年8月7日
◆ヒブ(Hib)感染症
◆小児の肺炎球菌感染症
◆ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ(急性灰白髄炎)
◆結核
◆麻しん(はしか)・風しん
◆水痘(水ぼうそう)
◆日本脳炎
◆ヒトパピローマウイルス感染症
◆B型肝炎
◆ロタウイルス感染症
インフルエンザ菌、特にb型は、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎などの表在性感染症の他、髄膜炎、敗血症、肺炎などの重篤な深部(全身)感染症(侵襲性感染症とも言います。)を起こす、乳幼児にとって問題となる病原細菌です。ヒブ(Hib)による髄膜炎は平成22(2010)年以前は、5歳未満人口10万対7.1~8.3とされ、年間約400人が発症し、約11%が予後不良と推定されていました(※)。また、生後4か月~1歳までの乳児が過半数を占めていました。
現在は、Hibワクチンが普及し、侵襲性ヒブ(Hib)感染症はほとんどみられなくなりました。
(※)厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の資料による
肺炎球菌は、細菌による子どもの感染症の二大原因のひとつです。この菌は子どもの多くが鼻の奥に保菌していて、ときに細菌性髄膜炎、菌血症、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎といった病気を起こします。
肺炎球菌による化膿性髄膜炎の罹患率は、ワクチン導入前は5歳未満人口10万対2.6~2.9とされ、年間150人前後が発症していると推定されていました(※)。致命率や後遺症例(水頭症、難聴、精神発達遅滞など)の頻度はヒブ(Hib)による髄膜炎より高く、約21%が予後不良とされています。
現在は、肺炎球菌ワクチンが普及し、肺炎球菌性髄膜炎などの侵襲性感染症は激減しました。
(※)厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会の資料による
(1)ジフテリア(Diphtheria)
ジフテリア菌の飛沫感染(※)で起こります。
昭和56(1981)年に改良型ジフテリア百日せき破傷風混合ワクチン(DPT)(無細胞型)が導入され、現在では国内の患者発生数は年間0が続いていますが、アジア地域では、時折流行的発生がみられています。
感染は主にのどですが、鼻腔内にも感染します。ジフテリアは感染しても10%程度の人に症状が出るだけで、残りの人は症状が出ない保菌者となり、その人を通じて感染することもあります。症状は高熱、のどの痛み、犬吠様のせき、嘔吐などで、偽膜と呼ばれる膜がのどにできて窒息死することもあります。発病2~3週間後には菌の出す毒素によって心筋障害や神経麻痺を起こすことがあるため注意が必要です。
(※)飛沫感染…ウイルスや細菌がせきやくしゃみ・会話などにより、唾液や気道分泌物のしぶきにつつまれて空気中へ飛び出し、約1mの範囲で人に感染させることです。
(2)百日せき(Pertussis)
百日せき菌の飛沫感染で起こります。
昭和25(1950)年から百日せきワクチンの接種がはじまって以来、患者数は減少してきていますが、最近、長びくせきを特徴とする学童から思春期、成人の百日せきがみられ、乳幼児への感染源となり、特に新生児・乳児が重症化することがあるので注意が必要です。
典型的な百日せきは、普通のかぜのような症状ではじまります。続いてせきがひどくなり、顔をまっ赤にして連続的にせき込むようになります。せきのあと急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。熱は通常出ません。乳幼児はせきで呼吸ができず、くちびるが青くなったり(チアノーゼ)、けいれんが起きるあるいは突然呼吸がとまってしまうことなどがあります。肺炎や脳症などの重い合併症を起こしやすく、新生児や乳児では命を落とすこともあります。
(3)破傷風(Tetanus)
破傷風菌はヒトからヒトへ感染するのではなく、土の中などにいる菌が、傷口からヒトの体内に入ることによって感染します。菌が体の中で増えると、菌の出す毒素のために、筋肉の強直性けいれんを起こします。最初は口が開かなくなるなどの症状で気付かれ、やがて全身の強直性けいれんを起こすようになり、治療が遅れると死に至ることもある病気です。患者の半数は本人や周りの人では気が付かない程度の軽い刺し傷が原因です。土中に菌がいるため、感染する機会は常にあります。また、妊娠中の母親が抵抗力(免疫)をもっていれば出産時に新生児が破傷風にかかるのを防ぐことができます。
(4)ポリオ(急性灰白髄炎)(Polio)
ポリオ(急性灰白髄炎)は「小児まひ」と呼ばれ、我が国でも1960年代前半までは大流行を繰り返していました。予防接種の効果により我が国では昭和55(1980)年を最後に野生株ポリオウイルスによる麻痺患者の発生はなくなり、平成12(2000)年にはWHOは日本を含む西太平洋地域のポリオ根絶を宣言しました。平成29(2017)年のポリオ流行国は、パキスタン、アフガニスタンの2か国までになり、世界中からのポリオ根絶も夢ではなくなってきましたが、ポリオに対する警戒は依然世界中で続けられています。
口から入ったポリオウイルスは咽頭や小腸の細胞で増殖します。小腸の細胞ではウイルスは4~35日間(平均7~14日間)増殖すると言われています。増殖したウイルスは便中に排泄され、再びヒトの口に入り抵抗力(免疫)をもっていないヒトの腸内で増殖し、ヒトからヒトへ感染します。ポリオウイルスに感染しても、ほとんどの場合は症状が出ず、一生抵抗力(終生免疫)が得られます。症状が出る場合、ウイルスの感染が血液を介して脳・脊髄へ広まり、麻痺を起こすことがあります。ポリオウイルスに感染すると100人中5~10人は、かぜ様の症状があり、発熱を認め、続いて頭痛、嘔吐があらわれます。
また、感染した人の中で、約1,000~2,000人に1人の割合で手足の麻痺を起こします。一部の人には、その麻痺が永久に残ります。麻痺症状が進行し、呼吸困難により死亡することもあります。
結核菌の感染で起こります。我が国の結核患者はかなり減少しましたが、まだ2万人前後の患者が毎年発生しているため、大人から子どもへ感染することも少なくありません。また、結核に対する抵抗力(免疫)は、お母さんからお腹の中でもらうことができないので、生まれたばかりの赤ちゃんもかかる心配があります。乳幼児は結核に対する抵抗力(免疫)が弱いので、全身性の結核症にかかったり、結核性髄膜炎になることもあり、重い後遺症を残す可能性があります。
BCGは、髄膜炎や粟粒結核などの重症になりやすい乳幼児期の結核を防ぐ効果が確認されているので、生後1歳までに受けることとなっています。
また、標準的接種期間は生後5か月~8か月となっています。
(1)麻しん(はしか)(Measles)
麻しんウイルスの感染によって起こります。感染力が強く、飛沫・接触だけではなく空気感染(※)もあり、予防接種を受けないでいると、多くの人がかかり、流行する可能性があります。典型的なはしかは、高熱、せき、鼻汁、眼球結膜の充血、めやに、発疹を主症状とします。最初3~4日間は38℃前後の熱で、一時おさまりかけたかと思うと、また、39~40℃の高熱と発疹が出ます。高熱は3~4日で解熱し、次第に発疹も消失します。しばらく色素沈着が残ります。
主な合併症としては、気管支炎、肺炎、中耳炎、脳炎があります。患者100人中、中耳炎は約7~9人、肺炎は約1~6人に合併します。脳炎は約1,000人に1~2人の割合で発生がみられます。また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という慢性に経過する脳炎は、はしか患者約10万例に1~2例発生します。
はしかは、医療が発達した先進国であっても、かかった人の約1,000人に1人が死亡するとても重症の病気です。日本でも平成12(2000)年前後の流行では年間約20~30人が死亡していました。世界各地で、はしかは再び増加傾向にあり、途上国を中心に多くの小児がはしかで命を落としています。
(※)空気感染(飛沫核感染)…ウイルスや細菌が空気中に飛びだし、広い空間で人に感染させることです。麻しん(はしか)、水痘(水ぼうそう)、結核等が空気感染します。
(2)風しん(Rubella)
風しんウイルスの飛沫感染によって起こります。潜伏期間は2~3週間です。典型的な風しんは、軽いかぜ症状ではじまり、発疹、発熱、後頚部リンパ節腫脹などが主症状です。そのほか、眼球結膜の充血もみられます。年長児や成人では関節炎の頻度が高く、予後は一般に良好ですが、血小板減少性紫斑病や脳炎の合併を認めることがあり、まれに溶血性貧血もみられます。感染症発生動向調査によれば、平成30(2018)年~令和元(2019)年の風しんの流行(累計5,247人)で、血小板減少性紫斑病が21人、脳炎が2人報告されました。大人になってからかかると重症になります。
妊婦が妊娠20週頃までに風しんウイルスに感染すると、先天性風しん症候群と呼ばれる先天性の心臓病、白内障、聴力障害、発育発達遅延などの障害を持った児が生まれる可能性が非常に高くなります。
水痘(水ぼうそう)は、水痘-帯状疱疹ウイルス(以下、VZVと言います)に初めて感染したときにみられる急性の感染症で、直接接触、飛沫あるいは空気感染によって広がる、最も感染力の強い感染症のひとつです。ひとたび感染すると一生、体の中(三叉神経節などの脳神経節や脊髄後根神経節)に潜伏感染し、加齢や免疫抑制状態等で再活性化し、帯状疱疹を発症します。
水痘(水ぼうそう)の潜伏期は通常2週間程度(10~21日)です。典型的な水痘(水ぼうぞう)は、特徴的な発疹が主な症状でかゆみを伴います。発熱を伴うこともあります。発疹は斑点状の赤い丘しんから始まり、その後3~4日は水疱(水ぶくれ)となり、最後は痂皮(かさぶた)を残して治癒します。発疹はお腹や背中、顔などに多い傾向がありますが、頭部など髪の毛に覆われた部分にも現れるのが特徴です。
通常、1週間程度で自然に治癒しますが、まれに脳炎や肺炎、肝機能の異常を伴うことがあり、抗ウイルス薬(アシクロビルなど)が使用されることもあります。また、皮膚から細菌が感染して化膿したりすることはまれではなく、敗血症などの重症の細菌感染症を合併することもあります。ハイリスク患者(急性白血病などの悪性腫瘍の患者さんや、治療によって免疫機能が低下している人及びそのおそれのある人)では特に重症となります。
学校保健安全法施行規則等に基づき、保育所、幼稚園、学校への登園・登校はすべての発疹が、痂皮化する(かさぶたとなる)まで停止となります。
なお、成人が水痘(水ぼうそう)にかかると、小児より重症になりやすい傾向にあります。
日本脳炎ウイルスの感染で起こります。ヒトから直接ではなくブタなどの体内で増えたウイルスが蚊によって媒介され感染します。7~10日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状を示す急性脳炎になることがあります。ヒトからヒトへの感染はありません。
本脳炎ウイルスに感染した人のうち100~1,000人に1人が脳炎等を発症します。脳炎のほか髄膜炎や夏かぜ様の症状で終わる人もいます。脳炎にかかった時の致命率は約20~40%ですが、治った後に神経の後遺症を残す人が多くいます。
国内での患者発生は西日本地域が中心ですが、日本脳炎ウイルスは西日本を中心として日本全体に分布しています。飼育されているブタにおける日本脳炎の流行は毎年6月から10月頃まで続きますが、この間に、地域によっては、約80%以上のブタが感染しています。日本脳炎は、以前は小児、学童に多く発生していましたが、予防接種の普及、環境の変化などで患者数は減少しました。最近では高齢者を中心に患者が発生していますが、平成27(2015)年には10か月児の日本脳炎確定例が千葉県から報告されています。また、平成28(2016)年は高齢者を中心に11人の報告がありました。報告数が年間10人を超えたのは、平成4(1992)年以降で初めてです。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、ヒトにとって特殊なウイルスではなく、多くのヒトが感染し、そしてその一部が子宮頸がん等を発症します。100種類以上の遺伝子型があるHPVの中で、子宮頸がんの約50~70%は、HPV16、18型感染が原因とされています。HPVに感染しても、多くの場合ウイルスは自然に検出されなくなりますが、一部が数年~十数年間かけて前がん病変の状態を経て子宮頸がんを発症します。子宮頸がんは国内では年間約10,000人が発症し、年間約2,700人が死亡すると推定されています。(出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」)ワクチンでHPV感染を防ぐとともに、子宮頸がん検診によって前がん病変を早期発見し早期に治療することで、子宮頸がんの発症や死亡の減少が期待できます。
B型肝炎(HB)ウイルスの感染を受けると、急性肝炎となりそのまま回復する場合もあれば、慢性肝炎となる場合もあります。一部劇症肝炎といって、激しい症状から死に至ることもあります。また、症状としては明らかにならないままウイルスが肝臓内部に潜み、年月を経て慢性肝炎・肝硬変・肝がんなどになることがあります。ことに年齢が小さいほど、急性肝炎の症状は軽いかあるいは症状はあまりはっきりしない一方、ウイルスがそのまま潜んでしまう持続感染の形をとりやすいことが知られています。感染は、HBウイルス(HBs抗原)陽性の母親から生まれた新生児、HBウイルス陽性の血液・体液に直接触れたような場合、HBウイルス陽性者との性的接触などで生じます。
ロタウイルスは、世界のどこでもみられる、主に5歳未満の乳幼児に多くみられる急性胃腸炎の原因ウイルスです。主な症状は下痢・嘔吐・発熱などで、ときに脱水、けいれん、肝機能異常、腎不全を、稀ですが急性脳症等を合併することがあります。年齢にかかわらず何度でも感染発病しますが、乳児期での初感染が最も重症で、その後感染を繰り返すにつれて軽症化していきます。
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